変形性膝関節症について
加齢に伴う膝の変形や膝の軟骨のすり減りに伴い、痛みや腫れが生じたり、膝の曲げ伸ばしがしづらくなる病気です。
変形性膝関節症の原因
発症する主な原因としては関節軟骨の老化です。年齢を重ねるにつれて、関節軟骨が弾力を失ってすり減って関節の変形が起こります。また、肥満の方や、遺伝的な要素、外傷や関節炎の後遺症でも発症することがあります。
変形性膝関節症の症状
一般的な症状として、膝の痛みや膝に水がたまることが挙げられます。初期は、起立時や歩行開始時休むことで痛みが取れるものの、中期には正座・階段昇降が辛くなり、末期になると安静時でも痛みが継続し、膝の変形が顕著になり、膝を伸ばすことができないため、歩くことが難しくなります。年齢を重ねるほどに罹患率が高くなり、1:4の割合で女性の方が多い傾向にあります。
変形性膝関節症の診断・検査
問診後、膝の内側を押したときに痛みがないか確認します。関節の可動域や腫れ、O脚変形を確認するためにレントゲンを撮ったり、必要に応じてMRI検査も併せて実施します。
変形性膝関節症の予防
運動療法を行うことが変形性膝関節症の治療・予防には効果的です。
日常生活での予防方法・注意点
膝関節を動かすために重要な大腿四頭筋を鍛えることが大切です。
例)SLR(Straight Leg Raising)運動
- 上向きの状態で安静にし、片膝を90度に曲げる、もう一方の片膝は伸ばし、足関節を曲げて持ち上げる
- 床から10cmの高さまで5秒間足を上げたまま保つ
- 床に足を下ろし、2~3秒ほど休む
左右の足を交代し、上記の動作を20回繰り返し行う
注意点
- 肥満体型の場合、ダイエットを行う
- 正座はしない
- 膝が冷えないように気をつけ、温めて血行促進させる
- 和式トイレは避け、洋式トイレを使用する
など気をつけるようにしましょう。
変形性膝関節症の治療
軽症の場合、消炎鎮痛効果のある内服薬・外用薬を使用すること、膝関節にヒアルロン酸を注射する治療を行います。この他に物理療法があり、大腿四頭筋強化訓練・関節可動域改善訓練で運動器のリハビリテーション、膝の温めを行うことや足底板・膝装具の作成なども行うことがあります。薬物療法・物理療法を実施しても改善が見られない場合、手術療法も視野に入れて治療を行います。主な手術方法として、関節鏡(内視鏡)手術・人工膝関節置換術・高位脛骨骨切り術(骨を切断し、変性箇所を矯正する手術方法)があります。
症状が軽い場合

薬物治療
痛み止めの薬(内服薬や塗り薬)を使うことがあります。
また、膝の関節に直接注射することで、痛みを和らげたり、関節の動きを良くしたりするためにヒアルロン酸の注射を行うこともあります。
運動療法(リハビリ)
- 大腿四頭筋強化訓練:膝の周りの筋肉を強くする運動を行います。これによって膝への負担を減らすことができます。
- 関節可動域改善訓練:膝が動きやすくなるように、関節を柔軟に保つ運動をします。
物理療法
- 膝を温める治療:膝を温めることで血流を良くし、痛みを軽くする治療を行います。
- サポート用具:足底板や膝装具(膝をサポートする器具)を作って、膝にかかる負担を減らすこともあります。
保存療法で改善しない場合
上記の治療で改善しない場合は、手術を検討することもあります。手術では、機能しなくなった関節を取り除き、代わりに人工の関節を入れる人工関節置換術を行います。
手術が必要な場合は、連携医療機関で行いますが、術後のリハビリは当院で可能です。
変形性股関節症について
加齢に伴う股関節の変形や股関節の軟骨のすり減りに伴い、痛みや腫れが生じたり、股関節の曲げ伸ばしがしづらくなる病気です。
変形性股関節症の原因
女性の方に多く、発育性股関節形成不全による後遺症や、股関節形成不全など、幼少期に患った病気や発育障害による後遺症が主な原因で全体の80%といわれています。
高齢社会となった現代は、上記のような後遺症がなくても、加齢によって発症しやすくなっています。
変形性股関節症の症状
立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みが生じます。症状が進行していくと、痛みが増していき、動かしていなくても痛みが出たり、寝ているときも痛みが生じます。
日常生活においては、足の爪切りや靴下の着用、正座、和式トイレの使用、階段の昇降、バスの乗り降りなどが困難になります。立ち仕事や歩くことがしづらくなるため、家事をこなすことも難しくなります。
変形性股関節症の診断・検査
症状が認められる場合、レントゲン撮影をして股関節の可動域を確認します。
精査する必要があると判断した場合には、CTやMRI検査を行います。
関節症の進行段階
前期関節症
この段階では、膝の関節が少し細くなったり、形が少し変わったりすることがあります。関節に軽い変化が見られる状態です。
初期関節症
初期段階では、膝の関節を覆っている軟骨(軟らかい部分)が薄くなり始めます。さらに、軟骨の下にある骨が硬くなり、少し痛みを感じることがあります。
進行期・末期関節症
進行していくと、関節の中や周りに骨棘(骨の突起)ができたり、骨の中に空洞ができることがあります(骨嚢胞)。この時期になると、膝の関節を支えている軟骨がほとんどなくなり、骨が直接露出してしまいます。これが進行した状態で、痛みや関節の動きに制限が出ることがあります。
変形性股関節症の治療
股関節症と診断された場合は、まず関節への負担を減らして大切に使うことがとても重要です。
初期段階の対策
- どのような動きで痛みが強くでるのかを知る
日常生活の中で、痛みを悪化させないような使い方を心がけることが大切です。 - 痛み止めの薬の使い方
痛み止めを使うことも選択肢の一つですが、できるだけ調子が悪い時や、どうしても負担をかけなければならない時に限定して使う方が良いです。 - 体重管理
体重が軽くなることで、股関節への負担が減ります。 - 杖の使用
抵抗がなければ、杖を使うことで股関節への負担を減らすことができます。
運動の重要性
痛みがあると、どうしても歩くのが億劫になり、じっとしていることが多くなるため筋肉が衰えてしまいます。そうならないために、できれば週に2〜3回、水中歩行や水泳(平泳ぎ以外)を行うことが理想的です。水の中での運動は関節に負担がかかりにくいので、おすすめです。ただし、痛みを引き起こす可能性があるので、少しずつ運動の強度を増やしていくことがポイントです。
手術について
上記の治療で改善しない場合は、手術を検討することもあります。
初期の段階では、自分の骨を生かした骨切り術が適応されることがありますが、関節の変形が進んでいる場合は、人工股関節置換手術が必要となることもあります。手術が必要な場合は、連携医療機関で行いますが、術後のリハビリは当院で可能です。